自宅の周辺を自転車で移動している時、一軒家は勿論、地面のないマンション、アパートでも見事に手入れされた花々が咲いていることに気づく。
私は以前、園芸に関わる仕事をしていた為、基本的な植物の扱いは心得ている。咲いている花が何なのか、どういう世話が必要なのか理解しているので、かけた情熱や手間は良く分かる。花が色鮮やかに、大きく、沢山咲いているという景色はとても贅沢で有り難いことなのだ。
草花、鉢花、観葉植物、野菜、果樹、水生植物など、御家庭で楽しめる植物は、今日では園芸店や道の駅、ホームセンター、何ならスーパーの店先だって売っている。花や野菜の種なんて100円ショップでまとめ売りしてたりする。「園芸」少し勿体ぶって言えば「ガーデニング」はブームでは無く定番の趣味としてこの国に根付いた。
にも関わらずその入り口は些か難解で敷居が高く、入りにくい。よく言われる原因は、初めて花を植えようとする初心者が必要とする初歩的なことを学ぶ機会が無い、教える人もいないからである。私が園芸に関わる仕事をしていたのは少し昔に遡るのだが、その頃から言われていた事だ。売る側とすれば売る→枯れる→また買ってね!になるのだろうがそれでは園芸の裾野が広がらないのもまた事実。資材や用具、土や肥料といった関連商品も売れない為、売る側にも優しくない。この問題を解決するため当時の私は様々な形でのアプローチを試みた。
結局、その仕事は辞めてしまったので今では何の意味も持たないが、その過程で得た私なりの園芸のいろはの「い」を書き留めておこう。
結論を最初に書いておく。一番大事な物は土である。
肥料も水も酸素も結局は根から吸収される。良い根が張るには良い土がたくさん必要である。貧弱な根では大きな株は育たない。肥料や水も効率良く吸収されない。酷いと根が酸欠になり植物が腐れ枯れてしまうことがある。
では良い土とは何なのか?ここで園芸入門書やネットを調べると「赤玉土7に腐葉土2、山砂1をウンタラカンタラ」とか書いていたりする。初心者はこの時点で「面倒くさい」と思ってしまう。家に帰ってそこら辺の土を掘り返して使ってしまう。日本の宅地造成に使われる土は植物を植えるのには適さない。乾燥すると固まるし肥料や水も留まりにくいのだ。これで失敗は確実なものになってしまう。
もう少し簡単な物はなかろうか?草花を鉢植えにする場合を考えよう。園芸コーナーを探すと「花と野菜の土」みたいな奴が売っている。やったー!と喜ぶのはまだ早い。
これにも種類、グレードがある。選ぶ目安としては容量25リットルに対してお値段500から600円前後のものだ。肥料は入ってない方が都合が良い。この目安以下のもの、例えば10リットル100円位のものになると砂と石、木の枝が増えてくる。これは避けたい。
土を買ったら後は植える鉢とそこに敷く軽石を買おう。これはたくさんは要らない。鉢の底の穴が開いた部分が隠れる位で良い。軽石を入れるより土を多く入れるべき。プラスチックでできた鉢底ネットは焼き物の鉢など底に大きな穴が開いてるものには必要だが、プラスチック製の鉢には不要な場合が多い。プラスチック鉢の底には細かい穴がきちんと開いている。
ここまできたら後少し。肥料を買おう。有機、化学、色々あるが固形、アンプル状の挿して使うもの、液体で薄めて使うタイプなど色々あるが、ここではハイポネックス一択、薄めて使うタイプを倍率通りに薄めて1週間に一回でOK。698円位で売ってます。サボテンや多肉植物、洋ランやシクラメンなど屋内で管理するもの、そして最もメジャーな花木であるバラには専用の用土や肥料がある為そちらを購入すべき。それ以外なら大体これで大丈夫。
花の苗を植える時はポットから取り出し軽く根をほぐす。切っちゃダメ。鉢に入れる土の量は8分目から9分目まで。水やりする時に水が溢れないようにするためです。しばらくはカンカン照りや高温、寒冷を避けましょう。
ここまで書いといてなんですが、なかなかに面倒でしょう?園芸店ならともかく、スーパーや道の駅のスタッフでは対応出来ませんよね。これでも全然入り口に差し掛かった位なんです。花苗の分も合わせるとそこそこお金もかかってます。
これだから最初に述べた通り「花が色鮮やかに、大きく、沢山咲いているという景色はとても贅沢で有り難いこと」なのです。