平成31年3月10日(日)
3月も中旬にさしかかりうちの病院でもようやくインフルエンザ対策の一環である「患者家族の面会」が一部緩和された。しかしインフルエンザそのものはこれからB型が流行する季節ではあるので御油断召されぬように。
今シーズンは通所リハビリの方はインフルエンザ罹患者はスタッフ、利用者ともに0を記録した。しかし病棟の方はシーズンを通じて誰かしら罹患者がいる、という状態になってしまった。今回は次に同じ失敗をしないように問題点を記録しておきたい。
まずは初動。12月中旬にスタッフと入院患者、ほぼ同時に罹患者が発生してしまった。入院患者はすぐ隔離されたのだが、隔離先に問題があったように思える。よりによってリハビリ室の真ん前だ。リハビリ室は入院患者のほとんどが利用する場所なのだがわざわざそのすぐそばに罹患者を配置するべきではなかろう。同時に感染したスタッフの方が病棟責任者であったせいもあるのだろう。こういった場合の対応はあらかじめ決めておく必要がある。
そして最初の罹患者が発生した後、スタッフ、入院患者間での感染をくい止めることができずに2ヶ月近く常に入院患者の誰かが隔離、スタッフの誰かが休みという状況が続いた。これは院内の感染対策に問題があったことに原因がある。外からの感染を防ぐ為の面会禁止の実施は速かった。しかし院内スタッフのマスク着用率が圧倒的に低かった。患者に直接接するスタッフは勿論、病院と契約して常駐している清掃スタッフなどもマスク必須、手洗い徹底である。私も気づいたら声掛けするようにしていたが、予防意識が低いように感じた。罹患した患者の介護をする病院スタッフの中に「息を止めればインフルエンザはセーフ」などと宣った馬鹿者もいたらしい。耳を疑ったが、本人がきっちり罹患しているため、どうやら事実なのだろう。
次に院内環境の問題がある。冬場は暖房を入れる為、とにかく空気が乾燥する。加湿と除菌を兼ねた専用の空気清浄機の設置が遅かった。初動から1ヶ月近く経過している。物自体は院内にあるためインフルエンザ罹患者が発生した場合、早々に設置すべきであった。そして患者スタッフともに手洗いうがいが不足していた。
特に患者の食事前の手指消毒はその概念すら無かった。さらに同時に院内で複数の人間が手を触れる手すり、オーバーテーブル、ドアノブなどの除菌シートによる拭き上げが全く為されなかったことも罹患者の増加の原因だったと考えられる。ここら辺の対策には通常の病棟業務に加え更にマンパワーも必要となるため、一度スタッフ間にインフルエンザが蔓延してしまうとどうしようも無かった、という感はある。それどころか勤務可能なスタッフ数が減ると勤務シフトも余裕を持って組めず、何の対策もせずに、まだインフルエンザに感染していないスタッフがインフルエンザ罹患者の介護・看護を実施、結果感染してしまう。病院スタッフはさらに負担増による体調の悪化、さらなる罹患者の増加という悪循環が現場では生じていた。最終的にはシーズンを通してで病棟スタッフの7割以上がインフルエンザに罹患する結果になった。フロア、職種に分けるとワンフロアの看護師の罹患率は8割を越えてしまっていた。
もう少し考えてみる。なぜこのような状況になってしまったのか、だ。まず明らかな理由が一つ。スタッフへのワクチン接種が遅かったことだ。入院患者に関してはほぼ例年通りだが、スタッフ向け予防接種の実施時期は12月に入ってからだったので今回最初に発症したスタッフに関してはまだ予防接種の効果はおそらく間に合っていないだろう。
もう一つが感染対策委員会が全く機能していないことだ。ちなみに私はもちろん呼ばれていないし、その活動内容も知らされていない。先に述べたように最初にインフルエンザ罹患者が発生してから終息するまでに、対応の遅れや明らかなミスがあった。少なくとも最初の隔離位置と病棟でのマスク、手洗いの徹底を心がけていれば防げた感染があった。そして何より恐ろしいのが「インフルエンザ治まって良かったねー」で何の反省もないところだ。これではまた今年の12月に同じことを繰り返してしまうような気がする。
皆様の職場ではこういったことの無いように、感染対策委員会の活動の充実を図って頂きたい。特にインフルエンザの感染経路と予防策を具体性を持って、あらかじめ手順、方式を決めて迅速に行うことが鍵であると今シーズンでは感じた。